今年も全国学力学習状況調査の結果が公表されました。市民から多額の教育予算をお預かりし、学校教育の充実への施策を進めている教育委員会として、全国水準の学力を保障することは、達成すべき目標の一つと考えています。
しかし、これは小6・中3の4月時点の学力の状況を示すものであり、これからの社会で必要とされる学力や生涯学び続ける力をどのように子どもたちに身に付けていくのかとの視点から、夏季休業中にしっかりと分析し、指導改善の方策を検討することで、2学期以降の実践につなげることこそが重要であると思っています。
先日、中島みゆきの「ファイト!」を久しぶりに耳にしました。中卒だから、仕事に就くことができないという語りから始まるこの曲は、高度経済成長を成し遂げ、学歴重視の風潮が経済格差につながる1980年代の社会において、逆境や困難に立ち向かう人々にエールを送っているように感じます。
この曲が発表された頃、大学生であった私は、高校中退の友人の会社勤めが難しい現実を目の当たりにしたことを思い出しました。私たちが義務教育を受けていた時代には、一律一斉の授業についていけない子どもへの支援などはなかったように思います。
いつの時代であっても、社会生活に必要な「読み・書き・計算」のような「知識・技能」をしっかりと身に付けさせる個に応じた指導・支援をすること、自分らしく生きる意味を肯定することができるよう「自己肯定感」を支えること、厳しい社会の中でも他者と協働して乗り越えていくための「非認知能力」を育成することは、義務教育の公立小・中学校が果たすべき重要なミッションです。
「ファイト!」と子どもに励ましの声をかけ、寄り添い、支えながら、義務教育修了時に必要な学力を保障していこうと日々奮闘する学校に対して、教育委員会として責任を持ち、その学校の課題に応じた伴走支援を続けていくという思いを新たにしたこのころです。
【日本教育新聞2025.9.8付「教育長の独り言」掲載】